暇です.暇なので今日は「アルミvsスチール」と題して,うんちくなんぞを.
スクーバタンクの場合,アルミとスチールがあります.
・アルミは錆びない.
・鉄は錆びる.
・アルミは軽い.
・鉄は重い.
一般にはそういうイメージでしょう.でも,これは全部嘘です.条件が同じでないと比べられないというのが正解.
まず錆ですが,表面処理にかなり依存します.現在スクーバ用として多く出回っているのはメタリコン処理されたもの.グレーでざらざらした感じのやつです.このメタリンコンはめっぽう強く,簡単には錆びません.また,ぶつけたりしても簡単には剥がれません.メタリコンではないものはどうしても錆て長持ちしませんので,もうめったに見なくなりました.
一方,アルミは簡単に電気腐食を起こします.バルブの多くは真鍮製.この真鍮とアルミの間で電気腐食を起こし,アルミが負けます.つまりタンクの首がやられるのです.
何年か前,アルミタンクの破裂事故が相次いで発生し,保安体制が強化されました.このため維持費(検査費用)が増加するようになったため,スチールタンクへの置き換えが進んでいます.ただしこれは国内の話.海外では相変わらずアルミの方が優勢みたい.
さて,次は重さ.材質的にアルミは強度が弱いため,厚みを増して同じ圧力に耐えています.つまり分厚いのです.このため,単位体積では確かに軽いアルミですが,タンクとしては重くなっています.10リットルの場合で,スチール12Kg,アルミ14Kg程度です.
次に浮力.水中ではすべての物質が浮力を受けます.10リットルの物質は約10Kgの浮力を受けます.もし重さが10Kgなら中性浮力,15Kgならマイナス10して水中重量5Kgとなります.
さて,最近のスクーバ用スチールタンクは,水中での重さがほぼ0Kgとなるよう作られています.10リットルタンクというのは,内容積が10リットルということで,タンクの壁の厚みがありますから,外容積はもっとあります.もし重さ12Kgで外容積12リットルならば,水中での重さはほぼ中性となります.
一方,アルミタンクは厚みがあるため外容積も大きく,その分浮力が大きくなり,浮いてしまうのが普通です.タンクという浮き輪を背負ってるようなものなので,それに見合うウエイトが必要になってしまいます.一般に,アルミタンクならウエイト2Kg増やせと言われるゆえんです.タンクが重いのにウエイトまで増やすので,陸上をたくさん歩くポイントでは嫌になりますよね.
ちなみに消防用や航空宇宙用などでは,軽ければ軽いほどよいはずで,重さ数Kgしかない樹脂製(FRP)もあったりします.これをもしダイビングに使おうとすると,沈まないのでウエイトを増やすことになるだけです.軽量タンクは高価なので,大枚はたいてもウエイトを増やすだけになります.
ところで,空気にも重さがあります.1気圧1リットルで約1.3g.10リットル200気圧だと,1.3g×10L×200気圧=2.6Kgとなります.30残して上がってくるとすると,1.3g×10×50=650gとなり,Ent/Extで約2Kg軽くなることになります.ダイビングの後半で浮き気味になると言うのは,減った空気の重さによるものです.
おことわり
話を簡単にするため,海水と真水の浮力の違いや,重さと質量の区別など,いい加減な表現をしています.ご了承下さい.